量的金融緩和とはどんな金融政策?
量的金融緩和とは簡単にいうと、世の中に流通するお金の量を増やすための政策です。このようにお金の流通量を操作しようとする政策のことを「金融政策」といい、日本銀行(中央銀行)が主導して行います。
市中銀行は急な大口預金引き出しなどに対応できるようにするために、日本銀行に当座預金口座を持っています。この当座預金の残高に応じて、市中銀行が企業や個人に貸し出す金額の量が決まります。ですので、この当座預金のお金を増やせばそれだけ多く貸すことができます。
そして、このお金を企業や個人が市中銀行から借りることで世の中に流通するお金が増えるという仕組みです。これで景気が良くなれば、雇用や賃金も増え、消費が増えることが期待できます。
量的金融緩和の方法
先ほど「この当座預金の残高に応じて、市中銀行が企業や個人に貸し出す金額の量が決まります。ですので、この当座預金のお金を増やせばそれだけ多く貸すことができます。」と書きましたが、どうやって当座預金を増やすのか。
それは市中銀行が保有している、国の債権である「国債」などを日本銀行が買い取り、買い取った分の金額を日本銀行内にある市中銀行の当座預金口座に加えることで残高を増やします。このことを「買いオペレーション」と言います。もちろん買い取りに応じるかどうかは市中銀行の自由ですが、有価証券を買い取られた市中銀行は、利益を上げるために増えた日本銀行内にある当座預金口座からお金を貸すことを考えます。当座預金にお金を置いておいても利子が付かないからです。
なぜ量的金融緩和が必要なのか?
「金融政策」でまず考えられる政策は、金利を下げることです。これにより、借り入れをしやすくすれば、お金の流通量も増えると考えられるからです。折からの平成不況で景気が状態が良くなかった日本では、日本銀行の政策で短期の金利をほぼゼロ%にするいわゆる「ゼロ金利政策」が取られました。実際の利率をゼロに近くするという意味です。
しかし、この「ゼロ金利政策」でも景気回復の兆しが見えず、金利操作だけでは難しいと判断した日本銀行は、市中に流通するお金の量を増やす政策を打ち出したのです。これが量的金融緩和という金融政策を導入した理由です。
量的金融緩和の効果は?
量的金融緩和が成功すれば、流通するお金が増えるため、お金の価値が下がります。その一方で物価が上昇を始めます。このことを「インフレーション」といいます。実は量的金融緩和を実施することで、緩やかなインフレーション状態を目指しているのです。日本銀行はこの目標を2%のインフレーション率と定めています。ところが、なかなかこの2%が達成できません。理由はいくつか考えられます。
1.企業や個人の借り手の問題
量的金融緩和により、銀行の融資可能金額が増えても、肝心の企業や個人が借りてくれないと市場に流通しません。不況下では企業は設備投資や人件費を少なくする傾向があります。原因は当然需要不足ですが、やはり、消費税の影響が大きいでしょう。
2014年4月から消費税率は、それまでの5%から8%に引き上げられました。このことで物を買わなくなったり、少しでも安い物というような購買意識を与えていると考えられています。例えば自動車にしても、より経済的なコンパクトカーや軽自動車に買い換えるなどです。こういう状況だと中々設備投資をして事業を拡大するためにお金を借りようとは思いません。
2.銀行の金融資産運用
1.の理由などで借り手が見つからないと、銀行は増えた資金を他へ運用する方向を考えます。債権や株式、土地などの購入資金として使い、資産運用をするのです。その結果、金融市場では株式の変動などで利益を上げる人もいるでしょうが、実物市場にはあまりお金が流通しないことになります。
●まとめ
量的金融緩和を含め大胆な金融政策を実施しても、日本銀行の思うような効果が得られていないのが、現況です。
このような状況下で日本銀行はついに、ゼロ金利を上回る「マイナス金利」政策まで打ち出しました。これは市中銀行が日本銀行に持っている当座預金残高が一定の金額を超過した場合に利子を支払わなければならないというものです。
市中銀行にとっては日本銀行に預けておくと損をすることになるので、積極的に貸出や投資することが期待されていますが、はたしてどこまで効果があるのでしょうか?今後の動向を見守っていく必要があります。
[参考記事]
「アベノミクスや3本の矢って結局何だったの?」
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