「円高」と「円安」は日本の通貨である円と日本以外の国が使用する通貨を交換する際に、ある一定時期から比べ、高くなったか、安くなったか、どちらかに変動したことを表現するために使用する言葉です。
例を挙げて説明します。
日本人であるAさんと海外からやってきたアメリカ人Bさんとの間で、日本円とアメリカドルを交換することになったとしましょう。昨日までは、100円で1ドルが交換できていたのですが(100円=1ドル)、今日からは120円渡さないと交換してくれないと言われました(120円=1ドル)。
日本人のAさんは今後、アメリカ人のBさんに20円高く支払わないといけません。20円高く払わないと交換してもらえないということは日本円の価値は下がり、ドルに対して20円安くなったということです。一方でドルは日本円に対して価値は上がり、20円高くなったということです。これを「20円の円安ドル高」と言います。
また、昨日までは120円で1ドルを交換していたけど、今日からは100円で1ドルを交換してもらえるようになったとします(100円=1ドル)。昨日よりも20円安く交換できるようになったことで、ドルの価値は下がることになり、一方で日本円の価値は20円分高くなったと言えます。これを、「20円の円高ドル安」と言います。
日本円とアメリカドルを交換する際の100円=1ドル、1ドル=100円と表記していたものは、「為替レート」あるいは「為替」と言い、先ほどは、20円でしたが毎日の為替レートが変動することを「為替変動」と言います。
円高・円安になるとどう変わるのか
二つの国の間で通貨の為替レートが毎日変動することで、私達の生活にはどのような影響があるのでしょうか。一般論ですが、円安になると、海外の通貨の価値は以前よりは相対的に高くなり、海外の製品などを輸入する際にかかる費用コストは高くなります。
例として、某ハンバーガーショップで使われる食材の原産国を公式ホームページから調べてみました。バンズの主原料である小麦粉は、アメリカ・カナダ・オーストラリア産のものを使用しています。間に挟むビーフパティは、オーストラリア・ニュージーランドの牛肉です。オニオンスライスは、アメリカ。ピクルスとして加工されているきゅうりは、トルコ・スリランカ・インドで栽培されたものを使用しています。
これらの食材を輸入してハンバーガーが一つ一つ作られていることを感じていただけると、1ドル100円から1ドル=150円へと円安・ドル高が進行してしまうと、製品を作るコストが高くなり、いつ値上がりしてもおかしくはありません。
消費者目線でみると、同じ商品で値上がりは好感されるものではありませんので、企業努力で価格を据え置きできるかどうか。結果として、企業利益を圧迫するかもしれません。このように円安の時は他国の通貨の価値が上がっており、海外からの輸入の費用は以前よりも高くなります。
一方で円高になると、海外の通貨の価値は以前よりは相対的に安くなります。海外からの輸入品が今までよりも安く購入できることもあります。
日本からハワイへ旅行に出かける際に、旅費以外に遊ぶために100万円の現金を持っていくのであれば、1ドル=120円の時に、日本円をドルに換えると手数料は抜きとして、およそ8,333ドルとなります。
2012年の為替レートは、1ドル=85円という時もありましたので、同じように日本円をドルにこの時に換えるとすると、およそ11,765ドルになりました。円高の時は他国の通貨の価値が下がっており、海外製品を購入する、海外旅行など海外でサービスを受ける際は割安に利用できることが利点となります。
通貨は国力を示すので「通貨が高い」(日本だったら円高)ということは「国の信頼が高い」ことを意味します。日本も国力が高いので、何か世界に問題(戦争や経済危機など)が起こった時には一気に円高に振れます。日本が国家破産するなんて言っている人がいますが、あれは嘘で、世界はきちんと分かっているのです。日本の資産と借金を引くと100兆円くらいの負債しかありません。100兆円くらいは日本の国力からすると大した金額ではありません。
円高と円安の要因
足元の景気動向というところにテーマを絞るのであれば、日本は輸出大国ですから為替が円安に振れているほうが、他国との貿易収支は良くなるのかもしれませんが、円高や円安に振れる要因は複雑で多岐にわたります。
その1つの要因に金利差があります。金利は景気が良ければ上がり、悪ければ下がる傾向にあります。マイナス金利の影響もあり日本の銀行にお金を預けた際の普通預金の金利は、2017年6月時点の某都市銀行で0.001%とバブル全盛期の1990年代に比べ超低金利で推移しており、お金を銀行に預けて利子収入で殖やすという時代ではなくなりました。
一方で海外の市場では一部金利がまだ高い国もあり、アメリカドルを使っての外貨普通預金であれば0.2%ですので、日本の普通預金金利の200倍の金利がつく計算になります(預金金利としての単純比較につき為替手数料、税負担などの諸費用は除く。)。
そこで新たにお金を預けようと検討中の人が、単純に少しでも多く受け取れる利子を殖やそうと考えるなら、日本円とアメリカドルのどちらの通貨で預けたいと思うでしょうか。結果としてアメリカドルの人気が高まり、日本円を売ってアメリカドルを買う動き(円売りドル買い=円安ドル高)が以前よりも増えてくると、より多く買われた通貨はその他の通貨よりも人気が出てきますので価値も次第に高まってきます。
逆にアメリカドルに交換された日本円は人気が下がり価値も下がることになります。そうすると、為替にも影響し円安ドル高が進行する動きが出ることになります。
金利差の他にも為替が動く代表的な要因では政治動向、戦争やテロ、自然災害などがあります。東北大震災の時、最近の話では北朝鮮のミサイルが日本列島を超えた時にも円高に振れました。トランプ大統領の当選直後もものすごい円高に振れました。通常は災害があった国の通貨の価値は下がるのが通常ですが、日本は信頼をされ過ぎていて逆に円高に振れてしまうという不思議な現象が起こっています。
また、細かなところでは毎回発表される雇用統計や機械受注などの経済指標でも為替は動きますが、長期的な為替の変動はその国の財政、科学技術力、景気動向、軍事力という総合的な要因で決まります。
円高・円安どちらにもメリット・デメリットが存在しますので、一概にいずれがいいのかという評価はできませんが、正しい情報を紐解いていくことで理解がより深まればと思います。
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