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アベノミクスや3本の矢って結局何だったの?

 

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アベノミクスとは?

 「アベノミクス」とは第二次安倍内閣の経済政策として安倍晋三首相が打ち出したものです。物価が下落し、なかなかデフレから抜け出せない日本経済に対して、デフレ脱却の足掛かりになる政策として、当初は大変注目を集めました。安倍首相の「アベ」と、経済学の「エコノミクス」をかけ合わせて「アベノミクス」と名付けました。過去にも米・レーガン大統領時代に「レーガノミックス」という経済政策がありました。

 では、アベノミクスとはどんな政策なのかを説明していきます。

 アベノミクスの骨格をなす3つ基本戦略を「3本の矢」と言います。一つ一つの矢について解説していきます。

1本目の矢は量的金融緩和などの金融政策

 アベノミクスの1本目の矢は、市場に流通するお金の量を増やして、消費意欲を上げ、賃金上昇、物価上昇に導き、結果として景気上昇を目指します。

(ア) どうやってお金の量を増やすのか?
 「量的金融緩和」という政策です。これは日本銀行が民間銀行が保有している国債などの有価証券を買取り、その分の代金を民間銀行に支払います。これにより市中銀行が個人や企業に貸し出すことのできるお金の量が増えます。例えば個人が住宅購入のために資金を借り入れしたり、企業が設備投資のために資金を借り入れしたりすれば、その分のお金が市場に流れます。

 銀行にお金が増えても借り手がいないと、銀行は国債などを買って資金運用を図ります。

(イ) その効果は?
 市場にインフレを起こす程にお金が増えれば、お金の価値は下がるので、その反対に物価が上がるわけですが、実際は期待されたほど市場にお金は流通していません。

 日本銀行は「2%のインフレ目標」を掲げ、政策開始から2年程度で実現するように実施してきましたが、未だにこの目標は達成できていません。「インフレ」とは「デフレ」の逆で物価上昇していくことです。ですがまだ物価上昇率は前年比2%アップに届いていない状況です。

 その原因としては、実質賃金が思うように上昇していない現実があります。インフレ目標には届いていませんが、実は物価は少しずつですが上昇傾向にあります。物価上昇理由はアベノミクスによる円安誘導や2014年度からの消費税増税の影響もあります。名目賃金(実際に貰う給料)の上昇率以上に物価が上昇しているので、実質賃金(物価を考慮した給料)が下がってしまっているのです。これでは個人や企業が消費しようとしても難しいです。

 一部の大企業では賃金上昇率もある程度は望めるのかもしれませんが、労働組合もない他の殆どの中小企業では多くの賃金上昇は望めていないのが現状です。

 一番のデフレの原因は消費税の増税を行ってしまったことだと私は思っています。これによりさらにお金を消費する人や企業が減って、需要が不足してしまいました。デフレは需要の不足から起こりますので、なぜ安倍さんが消費増税を決めてしまったのか不思議でなりませんでした。増税をしていなかったら、今よりかはデフレの状態はマシだったでしょう。

各指数の年度別推移(平成22年を基準年としています)

名目賃金指数 消費者物価指数 実質賃金指数
平成18 105.0 100.6 104.4
19 103.9 100.7 103.2
20 103.6 102.3 101.3
21 99.5 100.8 98.7
22 100.0 100.0 100.0
23 99.8 99.7 100.1
24 98.9 99.7 99.2
25 98.5 100.2 98.3
26 98.9 103.6 95.5
27 99.0 104.6 94.6
28 99.5 104.4 95.3

※実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数×100

2本目の矢は公共事業を増やすなどの財政政策

 アベノミクスの2本目の矢は、政府が大規模な公共投資を行い、需要を喚起する狙いがあります。具体的には政府が予算を使って道路や橋、公共施設などを建設することで、建設業関係の企業に雇用増大や利益をもたらします。一口に建設業と言っても、関連企業は多数あります。建物の場合であれば、木材、コンクリートやサッシなどの建材や建築設計関連など多岐に渡ります。政府が公共事業にお金を使うことで、市場にお金を循環させて全体の景気を良くしようというものです。

(ア) その効果は?
 基本的に建設業界を潤す政策なので、他の業界への波及効果が薄いのではないかという指摘もあります。しかし、建設事業というのはインフラ整備など無くてはならないものです。

 当然全国に関連企業も多く、建設業界の人がお金を使えば、徐々にではありますが、他への波及効果は見込めます。ただし、一時的なものに終わらせず、継続した公共投資が必要です。

 また、緊縮財政により公共事業の金額が増えていないのが現実で、もっと使ってもいいのではないかと思います。2010年の公共事業では年間15兆円くらい使っていましたが、今では6兆円くらいです。公共事業は国の資産にもなりますので、もっと大胆に使っていけばデフレから脱却できるのではないかと私は思っています。

3本目の矢は規制緩和などを使った成長戦略

 アベノミクスの3本目の矢は積極的な規制緩和などを行って、民間企業の成長を促す政策です。規制緩和により電力小売りの自由化やガスの小売も自由化されました。

 更に政府は成長戦略として、AIを使った自動運転やドローンを使った配送など移動に関する技術を発展させ、人手の不足の解消や住みやすい社会の実現を目指しています。既に沖縄ではAIを使った自動運転のバスの実験が行われています。また、一足先にアマゾンがイギリスでドローンでの配送を始めていますし、近い将来、これらの技術は当たり前になっています。

 また、AIなどを使った店舗管理で、人を雇わなくてもいいようなシステムの推進も図っており、将来的にはコンビニには従業員はいなくなります。これまたアマゾンが既に無人店舗システムを始めていますので、日本も数年後には当たり前になっているでしょう。こういう社会を政府は民間などの力を使って目指しているのです。

 しかし、政府は今現在移民政策を推進していて、「人」で人員不足を補おうと考えています。これらは3本目の矢の目標とは相容れない政策です。人が足りなければ、当然「技術」で解決する必要があるので、研究開発が活発化します。この機会を奪っているのが今の状況です。AIやドローンは産業革命に匹敵するほど社会を変えるので、日本がリードするチャンスですが、本当に残念です。安倍総理には今ではなく、将来を見据えた政策を確実に実行してほしいです。

(ア) その効果は?
 以上の成長戦略はまだ計画がまとまった段階なので、どの位の効果があるのかはこれからの展開を見守ることになります。

 既に行われている「電力自由化」では、ライフスタイルに合わせた料金体系の選択などで、これまでよりも安い料金で利用できたり、また新規参入で新たな電気事業者が増えたりというメリットが考えられますが、その評価はもう少し先になります。

 また、電力などのエネルギーは国の安全保障に関わるので、規制緩和をしてはいけないという意見もあり、これらを合わせるともっと評価は難しくなります。

まとめ

 アベノミクス第一の矢では金融緩和をして、緩やかなインフレ状態を作ろうとしたのですが、現状では思惑通りに市場にお金の量は増えていないのが実状です。そのせいで消費は伸びず、実質賃金は上がっていません。企業が儲からないと当然給料も上がりません。

 最大の原因は、先ほども言いましたが、需要が足りないからです。ですので、これらか予定されている消費税の増税は絶対にやってはいけません。もし、増税をしたら、デフレからの脱却は不可能になります。むしろ、消費税を5%に戻せば需要が喚起されてデフレからは脱却できると私は思います。これに合わせて公共事業を増やせば完全にデフからは脱却できます。こういう大胆な政策を安倍総理にはお願いしたいです。

[参考記事]
「量的金融緩和とはどんな金融政策なのか。その効果は」

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