経済連携協定(EPA)とは、二国間における貿易での関税を下げるor無くすことを中心に、その他に著作物などの知的財産を守ること、投資をしやすくすること、など、幅広い経済関係の強化を目指する協定です。通常は二国間で経済連携協定(EPA)は結ばれます。
なぜ、EPAが注目されているのか?
世界の貿易のルールを決めているのは世界貿易機関(WTO)ですが、原則全ての国が関税などで合意しなくてはいけないため、現実的に不可能です。
というわけで、二国間における経済連携協定であるEPAが現実的な解であるため、注目されています。また、EPAによって経済的な関係を深めることで、政治的な関係も強化されるので、外交上のメリットも出てきます。
日本が締結しているEPAは?
日本は、2017年8月末時点、
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、ASEAN
といった15個の国とEPAの締結をしています。また、コロンビアやトルコなどの国と交渉中です。また、日欧EPAも大筋合意しており、近いうちに締結される見込みです。
少し前までよくニュースになっていたTPP(環太平洋パートナーシップ)は大筋合意していますが、締結には至っていません。EPAは2国間での協定ですが、TPPは多国間での協定になりますので、EPAの多国間バージョンと言ってもいいです。
TPPとは?
TPPは、Trans Pacific Partnershipの略語で、環太平洋パートナーシップ協定という意味です。参加国は、2017年8月末時点で、
オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、日本
の11ヵ国の予定です。当初はアメリカも参加予定でしたが、2017年1月にトランプ大統領が離脱表明をしたため、11ヵ国になりました。
注目されている理由はこれだけの多くの国同士の協定は今までになく、発効されれば世界最大の自由貿易圏が誕生するためです(加盟国のGDPを合わせると14%を占める)。日本からの輸出で言えば、約1割がTPP参加国になるため、貿易がさらに促進される可能性があります。もちろん、関税をなくす方向に進むので、中には痛手を負う産業もあります。その代表的な産業が農業です。
RCEPとは?
TPPの他に注目されている協定としてRCEPがあります。RCEPは、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略で、東アジア地域包括経済連携という意味です。これもTPPと同じ多国間協定ですので、EPAの多国間バージョンです。
参加国はASEAN(Association of South East Nations)に加盟している10ヵ国
インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア
に、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、日本の6ヵ国を加えた合計16ヵ国です。交渉は秘密裏に進められているため、どこまで合意しているのかが分からない状況です。TPPも交渉内容が表に出ないことで批判されていた時期がありましたが、RCEPも同じ状況です。
RCEPが実現すれば,人口約34億人(世界全体の約半分),GDP約20兆ドル(世界全体の約3割),貿易総額約10兆ドル(世界全体の約3割)を占める広域経済圏が出現。
外務省の資料から引用
日欧EPAとは?
TPPはどうなるか分からない状況ですが、日欧EPAは締結される見込みになっています。締結となった場合、約90%の品目の関税がなくなる見込みで、非常に大きな効果が見込めます。
2017年(平成29年)7月6日、日本とEUは、これまで約4年3カ月にわたり交渉を続けてきた日EU経済連携協定(EPA)の大枠合意に至った。世界のGDPの約3割、人口の約1割、世界貿易の約4割を占める日EUによる、世界で最大級の規模の、自由な先進経済圏が新たに誕生することになる。
財務省の資料から引用
EPAに関する世界の流れ
イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ政権誕生およびTPPからの離脱といったように、自国の利益を最優先して貿易を制限する保護主義に傾く国が多くなっています。
一方、その影響もあって、自由貿易を推進したい日本とEUは保護主義に傾く状況に危機感を感じ、交渉を加速し、また、両者ともに妥結をして欧EPAは大筋合意に至った背景があります。
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