生命保険の更新時期が近くなったり、保険会社の営業職員から保険の見直しを勧められたりしたときに、保険の「下取り」「書き換え」「乗り換え」をしませんかと言われた経験はありませんか?
これらはすべて保険の転換を意味しています。実は、保険の転換ほど、保険契約者が知らない間に損をする可能性が高いものもありません。生命保険の転換とは何か、どういった点に気をつければよいのか、くわしくご紹介します。
生命保険の転換とは
生命保険の転換とはひと言で言えば、既加入の生命保険を下取りして、新しい保険に変えることを言います。
下取りされる既契約保険の条件は、定期保険などの掛け捨てではなく、終身保険等貯蓄性のある保険です。掛け捨て保険のように既契約保険で貯まっているお金がなければ、下取りをすることができないためです。
下取りをする保険に貯まっていたお金は、新しい保険に充当されるため、新しい保険の保険料は、充当された部分以外の保障に対してだけの支払いとなり、下取りされる保険の保険料と比べて、それほど上がらずに済みます。
自動車の下取りに置き換えると、このようになります。下取り車を当初買った時、100万円の価格に対して、頭金50万円プラス分割で毎月2.2万円x24か月の支払いをしていたとします。
2年経って150万円の新しい車に買い替える場合、下取り価格が査定により40万円で残債はなかったとすると、残り110万円の支払いとなります。その110万円を48回払いでローンを組めば、月々約2.3万円の支払いとなります。
つまり、下取り価格が新しい車の代金に充当されるおかげで、新しい車に対して支払うお金は150万円ではなく110万円で済むということです。
転換で損をするケース
支払う保険料はあまり変わらず、保険が新しくなるのは一見良さそうに見えますが、以下のケースでは、転換をすると損をするので注意が必要です。
1.予定利率が高い保険の下取り
予定利率とは、保険会社が顧客から預かった保険料を運用する利率で、保険料はあらかじめ定められた予定利率に基づいて計算されるため、予定利率が高い保険は、同じ保障内容でも保険料が安くなります。
一般に世の中の金利が高いときには、予定利率も高くなり、逆の場合は予定利率は低くなります。しかも一旦保険に加入すると、加入時の予定利率はその保険契約が終わるまでずっと同じです。従って、バブル期のような予定利率が高い時期に加入した保険は、今金利が安い時代でも予定利率は変わらず高いままです。
これで困るのは保険会社です。顧客には高い利率を約束していながら、実際には低い運用率しか出せない、いわゆる「逆ザヤ」になるからです。そこで保険会社は、何とかして予定利率が高い保険を減らそうとします。そして、その手段のひとつが「転換」なのです。
「新しい保険が発売になったが、今加入している保険を下取りすれば、保険料がほとんど変わらず、新しい保険に変えることができます」と、予定利率のことなど説明もせずメリットだけ伝えて、本当は下取りをしないほうが顧客にはメリットがあるにもかかわらず、転換を迫ってくるわけです。
2.保険料は本当は上がっている
「保険料はほとんど上がらずに、新しい保険に書き換えられます」というのは実は詭弁で、表面的には確かに保険料は上がってはいませんが、それは前の保険で貯まっていたお金を下取りをしたからであって、下取りをしなければ間違いなく保険料は上がります。
しかも、その「前の保険で貯まっていたお金」というのは自分のお金であって、それを充当したことで保険料が上がらないと言われても、本当は理屈に合いません。
3. 新しい保険の掛け捨て部分に充当され、貯蓄性が著しく下がる
これもよくあるケースです。下取りをする保険で貯まっていたお金を、新しい保険に充当する際、終身保険のような貯蓄性のある部分に充当するのであれば良いのですが、定期保険特約のような掛け捨て部分に充当すると、せっかく貯まっていたお金がどんどん掛け捨てでなくなっていきます。
下取りをする前は資産価値のある保険だったのに、下取りをしたらほとんど解約返戻金という資産価値がない保険になってしまっていたというケースは、本当に良くあります。
まとめ
保険会社から「下取り」「書き換え」「乗り換え」「転換」という提案があったら、まず警戒しましょう。
チェックポイントは、
1. 下取り前の保険と新しい保険のそれぞれの予定利率
2. 下取りをする保険で貯まっていたお金を、新しい保険のどの部分に充当するのか
の2点です。
これらについての明確な説明を受ければ、果たしてその転換が良いものか、そうでないかの判断がつきます。
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