「需要と供給」は経済の基本原理です。簡単なようで意外と分かりにくいものです。私たちは日常生活で、必ず何かを買って、消費しながら生活をしています。例えば衣食住に関するものなど、毎日でも必要なものは、その都度代金を支払って購入します。そこには、買う側と売る側の2つの立場が存在します。つまり「買う側」の立場から経済を考えると、それを「需要」と言います。一方で、「売る側」から考えると「供給」となります。以下更に詳しく説明します。
●需要とは?
需要とは簡単に言うと「欲しい」という気持ちです。「需要量」は、どれくらいの消費者が〇〇商品を欲しいと思っているのかです。例えば、米やパンなどの食料品や衣料品などの生活必需品は需要量の多い商品だと言えます。また、宝石や貴金属などの贅沢品はある程度の需要はあるとしても、生活必需品ほどではないでしょう。
●供給とは?
供給とは誰かが「欲しい」とする商品を作る生産者、つまり売る側を指します。「供給量」とは〇〇商品を消費者に売る量です。生産者がたくさん売りたいと考える商品ほど、供給量が多くなるわけです。
●需要と供給の関係
物を買う側の立場で考えると、同じ物であれば、1円でも安く買いたいと考えます。他方、物を生産する側から考えると、1円でも高く売りたいと考えます。物の値段はこの買いたい側と、売りたい側の妥協が一致する金額に決まります。
例えばあるパン製造会社が原価200円のパンを1個400円で500個製造したとします。この時の買いたいと思う人(需要量)が200人だとすると、8万円の売上となりますが、原価10万円に対して2万円の赤字になり、しかも300個も余ってしまいます。しかし、これを1個300円にすると買いたいという人が増えて500人になったとします。15万円の売上となり、5万円の利益が上がり完売となります。
このように、生産者側は1円でも高く売りたいわけですが、買い手がその値段で買わないとかえって損をすることになりかねません。そこで、需要量と供給量が一致する点を探りながら価格設定をしていくというわけです。また逆に、価格が安いと需要量が供給量を上回り、品不足になることがあります。この場合は生産者側が価格を上げて利潤を高めようとします。このように、売り手と買い手の駆け引きにより価格が調節されることを「価格の自動調節機能」と言います。
●需要量と供給量の変化
需要量や供給量は様々な経済状況の変化などに伴い、増減することがあります。
・需要量が増加する場合
1.給料が上がる…給与が増えれば〇〇を買おうかなと思うようになります。
2.減税…所得税や消費税などが引き下げれられば、その分が消費に使われる可能性があります。
3.流行…流行商品が登場すると、一時的にその商品の需要量が増加することがあります。
4.競合商品の値上げ…ライバル商品が値上げすると、その商品とライバル関係にある商品の需要量が増加することがあります。例えば自動車の場合、A社とB社で同性能の自動車があるとすると、安い方の自動車が売れやすくなるということです。
・需要量が減少する場合
1.給料が下がる…所得が減少すると、消費意欲も下がり、需要量の減少につながります。
2.流行の終了…その商品の流行が終了すれば、流行商品の需要量は減少に向かいます。
3.競合商品の値下げ…ライバル商品が値下げすると、その商品とライバル関係にある商品の需要量が減少することがあります。
・価格が下落し、供給量が増加する場合
1.原材料価格の値下がり…原油などの原材料の価格が下がると生産コストが下がり、商品の価格に反映されるので供給量の増加につながります。
2.人件費削減…従業員の人件費を下げた分が販売価格に反映され、供給量が増加することがあります。
3.技術革新…新技術が導入されると、製造コストの削減につながり、供給量が増加することがあります。
・価格が上昇し、供給量が減少する場合
1.原材料価格の値上がり…原油などの原材料の価格が上がると生産コストも上がり、商品の価格に反映されるので供給量の減少につながります。
2.人件費増加…従業員の人件費増加分が販売価格に反映され、供給量が減少することがあります。
3.天候不順や自然現象が関係することによる生産量の減少…例えば天候不順による不作で、野菜や果物の収穫量が減少した。あるいは、魚の減少で漁獲量が減少した場合などです。
まとめ
日用品などの単価の安いものは「薄利多売」といって、たくさん作ってたくさん売らなければ利益が上がりません。一方で宝石・貴金属などの高額商品は、元々需要がそう多くはないので、あまり値下げはしません。このように物の値段は買う人が多いか、少ないかによってある程度決まってくるということです。
[参考記事]
「GDP(国内総生産)とは何か?分かりやすく解説します」
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