取引はFX会社との契約により縛られている
外国為替証拠金取引(FX)をやっている人であれば、「FX口座を凍結された」という噂を一回は聞いたことがあるのではないでしょうか。
FXを始めるにはFX会社のルールに従うという契約をFX会社と交わす必要がありますが、その契約に違反した場合には、取引ができないようにFX口座凍結をされることがあります。
契約の内容はFX会社により様々ですが、共通の内容も多く、例えばFX口座の貸与禁止などはどのFX会社にも共通しています。
これとは別に、今問題となっているのはFX会社により異なる契約内容の部分です。
特に、取引方法においてA社はOKだけど、B社は禁止しているといった内容があるのです。
外国為替市場とは
先ず、最初に外国為替市場についてお話しします。
外国為替市場は、世界各国の外国為替を取り扱う金融機関やブローカーがネット回線や電話回線で接続されており、様々な国の通貨を売買をしている市場です。インターバンク市場とも呼ばれます。
日本では、三菱東京UFJ銀行や野村證券など大手銀行、証券会社などが、このインターバンク市場に参加しています。
インターバンク市場に参加している金融機関は、例えば「1ドル115円でドルを買う」というように、自分で売買取引の値段を決めて取引をしています。
もっとも、インターバンク市場には多くの参加メンバーがいますから、みんな有利な取引を目指して価格競争をしていますので、自分で売買価格を決めるといっても市場原理が働き、価格が決まっていきます。
日本のFX会社の2つの形態
ところで、日本国内のFX会社には、2つの形態があります。
1つは取引所取引を行う会社、もう1つは店頭取引を行う会社です。2つの取引形態を分けて、その双方を行っている会社もあります。
①取引所取引
取引所取引は、金融商品取引法に基づき公的取引所として設立された東京金融取引所との取引になります。「くりっく365」という愛称で呼ばれています。
取引レートやスワップ金利、スプレッドなどは全て東京金融取引所が決めます。東京金融取引所との取引は、東京金融取引所が認めた取扱会社を通じて行います。
一方、東京金融取引所は、インターバンク市場で取引しているゴールドマンサックス証券などのマーケットメーカーから売買レートなどの提示を受け、有利な条件提示のあったマーケットメーカーと取引を行います。
間接的にせよ、取引所取引では、インターバンク市場での取引を行っていることになります。この場合、取扱会社は単に取扱手数料収入を得ることになります。
店頭取引会社との取引
一方、店頭取引は、私たちがFX会社を通してインターバンク市場で取引しているという取引形態ではありません。
私たちが取引している相手は、あくまでもFX会社であり、1対1の取引になり、「相対(あいたい)取引」と呼ばれます。
従って、取引レートやスワップ金利、スプレッドなどは全てFX会社が決めます。もちろん、世の中にはFX会社はたくさんあるわけですから、市場原理が働きます。
FX会社はそれぞれ、できるだけ私たちが有利と感じられるレートやスワップ金利、スプレッドを提供したり、操作性の良い取引ツールを提供したり、様々な情報提供を行い、顧客を確保しようと競争しています。
従って、例外を除いて、FX会社で大きくレートが市場レートと乖離させるということはありません。
店頭取引の場合、1対1の取引なので、私たちが利益を得るということは、FX会社が損失を被るということになります。
では、もし私たちが勝ってばかりいたら、店頭取引を行っているFX会社は一体どうなってしまうのでしょうか。
負けてばかり・・・ということになって倒産してしまいますね。
これを避けるために、FX会社はインターバンク市場に参加している金融機関を通じてリスクヘッジのためのカバー取引を行います。
このカバー取引は全ての取引に適用されているわけではなく、FX会社独自の判断でカバー取引をするかどうか、どれぐらい行うかを瞬時に決めています。
すなわち、自社で多くの顧客の売買があるわけですから、それを相殺したうえでFX会社が損をする可能性があると判断したり、リスクが大きいと判断したときにはカバー取引を行うのです。
カバー取引は、例えば、私たちが買い取引を行った時には、FX会社もインターバンク市場で同じ買い取引を行い、私たちが儲けたときにはFX会社も同様にインターバンク市場で儲けを出して私たちに支払うという方法です。
もちろん、FX会社は私たちがスプレッドやスワップの中で支払う“手数料”より有利な条件で取引を行いますから、損をすることはありません。
店頭取引のFX会社と私たちの取引の仕組みはこのようになっているのです。
FX会社が禁止する取引手法が凍結の理由
店頭取引のFX会社は、私たち顧客との売買勝負で利益を上げ、リスクヘッジはインターバンク市場でのカバー取引で行うお話をしました。
店頭取引のFX会社にとって一番避けたいことは、このリスクヘッジができない状態が生じることになります。
このような状態を生じさせてしまう取引が存在し、この取引方法を行うと、FX会社から取引のできない状態、即ちFX口座凍結の処置を受けることになります。
その取引方法が、秒速スキャルピングという方法です。
秒速スキャルピングとは
FX取引は、ポジションの保持時間により様々な取引手法があります。
相場は上下動を繰り返しながら動きますが、そのサイクルは秒単位から分単位、時間単位、日単位、週単位、年単位、数年単位など様々です。
比較的短い時間、長くてもせいぜい5分~10分以内ぐらいで取引を完結する手法をスキャルピングと呼びます。
このスキャルピングという手法は、1回の取引での利益幅は大きくはありませんが、短い時間で取引を行うので、何回も繰り返して行うことができます。
そして繰り返して取引を行うことで、結果的に大きな利益を得ることができます。
このスキャルピングを秒単位で繰り返す取引を「秒速スキャルピング」といいます。
FX会社にとっては、この秒速スキャルピングを繰り返し行われると会社存立の危機に関わってしまうのです。
FX会社が秒速スキャルピングを嫌う2つの理由
秒速スキャルピングがFX会社の存立危機を招く理由の1つ目は、秒速スキャルピングが行われた場合、店頭取引では、先にお話ししたカバー取引ができなくなる場合があるのです。
特に、大きな金額の取引をされた場合は、カバー取引ができないとなるとリスクが高まってしまいます。
もう1つの理由は、FX会社の取引システムへの負担が増え、正常なシステムの稼働に影響を与えるからです。
この2つの理由もしくはどちらか1つの理由から、店頭取引、取引所取引に関わらず、FX会社は取引回数の制限を設ける旨、契約にうたっている場合があります。
どれぐらいの回数で取引できなくなるのか
取引回数制限を設けているFX会社に尋ねてみると、その具体的内容は公開していないという答えが返ってきました。従って、その規制内容はFX会社の判断によるということになります。
おそらく、何らかの基準で、FX会社内でアラートが出たときに、FX口座凍結が実行されると考えていいでしょう。
しかしながら、私たちが一般的に手動で行うレベルの取引回数や金額のスキャルピングを行っても、FX口座凍結に至ることは先ずないと言っていいと思います。
実際に、私自身も含め、私の周りで1日に何百回も取引を行っていてもFX口座凍結をされた人はいません。
スキャルピング取引をするには
店頭取引、取引所取引に関わらず、契約に取引回数制限を設けていないFX会社も多く存在します。
そのようなFX会社に実際に尋ねてみると、取引回数の制限は設けていないという回答が返ってきました。
また、最近は、スキャルピングによる制限を設けていないと謳うことで集客をはかっているFX会社も存在します。
ただ、自動売買ソフトを用いた取引は、人間が手動で行うよりも素早い取引を繰り返し行うことができるので、取引回数の制限を行っていないFX会社でも禁止しているところが多いようです。
スキャルピングで繰り返し取引を行いたい場合には、取引回数制限を設けていないFX会社で取引を行うのが安心です。
契約内容を確認して取引を行うのが大原則だと思いますが、契約内容をいちいち読むのは面倒くさいという方もいらっしゃるのではないかと思います。
そのような場合はズバリ取引手法に関する禁止事項をFX会社のカスタマセンターに問い合わせてみることをお薦めします。
多くのFX会社が丁寧に対応してくれます。
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