Read Article

広告

中央銀行による利上げと利下げを分かりやすく解説します

 

「利上げ」と「利下げ」って

 新聞の経済面やテレビニュースでよく目に耳にしますよね。

「FRB(アメリカの中央銀行)が今年2度目の追加利上げを決定しました・・・」

 アメリカに限らず、「利上げ」「利下げ」の決定は各国の中央銀行が行います。日本の中央銀行は「日本銀行(日銀)」ですね。

 さて、2008年にアメリカで起きた「リーマン・ショック」は世界的金融危機として今も記憶に新しいところです。まさに世界的な金融パニック状態でしたね。株価は下がるし、ゴールドや原油価格などあらゆる金融商品が暴落しました。景気も急激に悪くなりました。

 世界中の国々においては政府と中央銀行が揃ってこの危機に対応しました。例えば、アメリカが取った対策は「公的資金のバラまき」。つまり金融機関に大量の公的資金を供給しました。「金融緩和政策」ですね。同時にゼロ金利政策も実施し、実質的な「利下げ」を行いました。

 このように「利下げ」は景気が落ち込んだ場面で行われます。

 中央銀行が「お金(マネー)」を市場に投入し、さらに「利下げ」を行うことで市場(かみ砕いて言えば「世の中」)における「お金(マネー)」の循環を潤沢にすることを目的として行われる政策です。

 では、リーマンショック時、中央銀行はどのような行動を取って、どのような効果を期待していたのかを簡単に説明します。

1・中央銀行は民間の銀行が保有している国債を大量に購入します。

2・購入する(買う)わけですから当然「お金(マネー)」が民間の銀行に流れます。

3・そして中央銀行は、同時に「利下げ」も実行します。

4・「利下げ」を行うということは借入(借金)の利息は下がり、民間の銀行以外の企業は「お金(マネー)」を借りやすくなります。(「お金(マネー)」を借りても返済する利息が少なく済むわけですからね)

・企業は融通した「お金(マネー)」で設備投資をします。

6・設備投資をした結果「モノ」がどんどん売れ、従業員の賃金も上昇します。

7・「モノ」はどんどん売れるため、物価は上昇します。しかし、賃金も上昇しているため、消費(購買力)は落ちません。むしろ上がっていきます。

8・ここで景気の好循環が生まれます。物価と賃金が上昇していく「正」のスパイラルですね。

 一方、「利上げ」はどうでしょう?

広告

利上げとは?

「利上げ」は「利下げ」の逆の政策です。

 さて、始めに説明した「利下げ」によって市場に出回っている潤沢な「お金(マネー)」は行き場をどこに求めるのでしょうか?

 「お金(マネー)」の代表的な行き場は「株式市場」です。大量の「お金(マネー)」が株式市場に流れ込み、株価は高騰します。この株価の高騰を契機に、市場は好況感に沸き、「好景気」となります。お金が不動産に向かえば不動産バブルが生まれます。

 一見すると「好景気」は「ジャブジャブな感じ」でいいですよね。

どんな時に利上げをするのか?

 しかし、中央銀行はこの「行き過ぎるジャブジャブ感」を嫌います。市場に大量に出回った「お金(マネー)」は溢れんばかりの供給過剰状態となり、ついには「お金(マネー)」の価値を下げることになります。何もせず、ただジャブジャブと「お金(マネー)」を流し続けることもまた金融危機をもたらす原因となるのです。バブルは株にせよ、不動産にせよ、必ずと言っていいほど弾けます。高ければ高いほど落ちた時の衝撃は大きくなります。

 ここで中央銀行はそうなる前の予防策として「利上げ」を行います。俗にいう「金融引締め政策」ですね。

 では、利上げはどのように行われ、どういった結果になるのか。簡単に説明します。

1・中央銀行は「利上げ」を決定し実施する結果、借入の利息も上がります。

2・借入の利息が上がるわけですから、企業は「お金(マネー)」の借入を抑制します。

3・一方、中央銀行はこれまで大量に購入した国債を売却します。(資産の圧縮)

4・中央銀行が国債を売却(売る)わけですから、その対価としての「お金(マネー)」は市場からどんどん中央銀行に吸収されていきます。

5・その結果、市場でのジャブジャブな「お金(マネー)」は縮小し、「行き過ぎた景気」を沈静化させます。(過度なインフレの抑制)

利上げの効果とは?

 先ほど説明したとおり、利上げは「金融引締め政策」ですから、市場に出回っている「お金(マネー)」を縮小する効果があります。

 株式市場でいえば、これまで潤沢に出回っていた「お金(マネー)」が徐々に引いていくため、株価はだんだんと下落していきます。また、金利が上がるわけですので、不動産を買う人も少なくなり、価格は高いところから落ちてきて安定してきます。こうなると、市場にもはや「ジャブジャブ感」はありません。

 「利上げ」を行うことで「行き過ぎた」景況感を抑制する効果があるわけです。ただこれは経済学的にいえば「正しい在り方」なんですね。

 「景気循環の波」という言葉を聞いたことは恐らく誰しもあるはずです。勿論、景気の循環は市場原理に従うことが理想的ではあるのですが、そこには人間のいろいろな思惑が交錯し、必ずしも良い景気循環の波を形成することはない、といえます。

 そこで、中央銀行が政策的に「利上げ」と「利下げ」を繰り返し行い、経済学的にいう景気の良い波を導き出そうと、市場の見張り番として「手入れ」を行うわけです。

 通常はバブルになってから利上げを行うのではなく、物価指数が少しずつ上がってきたところで、高くなりすぎないように先回りして徐々に金利を上げていきます。バブルになってからだと既に遅く、高低差によって社会のダメージが大きくなります。例えば去年、3000万で買った不動産が今年2000万まで下がってしまっては消費意欲がなくなり、物を買わなくなります。そうなる前に金利を上げてバブルにならないように予防線を張るのです。

まとめ

 利上げは「行き過ぎた景況感」を沈静化させる役割を持つと同時に、市場金利の代表である長期金利(10年物国債)の上昇も演出します。

 長期金利の上昇はその国の通貨を購入する契機となります。現在のアメリカがまさにその典型ですね。

 リーマン・ショック後、アメリカ・欧州(EU)・日本は「利下げ」を行い金融緩和政策の中、なんとかしてインフレに持ち込もうとしてきました。

 そのような中、欧州(EU)・日本は未だ金融緩和政策を継続していますが、アメリカが先んじてこの政策を取りやめ、2015年12月、9年半ぶりに利上げを決定しました。そして、2017年6月現在まで、段階的かつ、徐々に利上げを決定し実行しています。

 利上げの実行は長期金利を上昇させる効果があると先に説明しました。経済学的な観点からすれば、金利の低いユーロや円を売って、金利の高いドルを買うことが教科書上の定説です。

 この状態が継続すれば、ユーロ安ドル高(ユーロを売ってドルを買う)、もしくは円安ドル高(円を売ってドルを買う)という局面になるはずですが、必ずしもそうなっているとは今のところ言えません。

 なぜか?市場には人間の心理が交錯しているからです。「経済学」の教科書通りにならないこともまた、「経済心理学」的な観点からすれば研究するに値する事象でもあるわけですね。

 ここでは、「利上げ」と「利下げ」について定説的な解説を行いましたが、その中に蠢く(うごめく)人間の心理もまた同時に存在しています。「経済学」の教科書通りにはならない理由はそこにあるわけですね。

[参考記事]
「円高と円安についてと円高と円安になる要因について解説」

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a comment

*
*
* (公開されません)

Return Top