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マイナス金利とは何か?〜誰にでもわかるマイナス金利の意味

 

 皆さん「金利」というとどういうイメージをお持ちですか?

 最も身近なところで感じる「金利」は「預金につく『利息』」です。通常、我々が銀行(ここでは普通預金とします)に「お金」を預ると、「利息」がつきます。昨今、日本における普通預金の利息はメガバンクにおいては0.001%。これは、例えば1年間、普通預金に100万円預け入れた場合、元本100万円の対価として10円の利息が支払われることを意味します(100万円×0.001%=10円)。

 利息の大小について、ここで論じるところではありませんが、いずれにせよ、私たちの常識からすると「利息」=「金利」は「元本にプラスして支払われるもの」ということが「当たり前のこと」として定着しています。

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マイナス金利とは?

 マイナス金利は「マイナス」という表現がつきますから、ロジック的に「元本にプラスして支払われるもの」ではなく、「元本にマイナスして支払われるもの」、つまり先の例に当てはめると、100万円の元本に対する預け入れ手数料として10円を支払う、ということになります。

 実際、日本において私たち一般の預金者にマイナス金利を適用している銀行はありません(こんなことをされたら誰も銀行にお金を預け入れませんよね・・)が、日本銀行(以下、日銀)が現在進行形で行っている金融政策の一つとして「マイナス金利」政策があります。

日銀がマイナス金利にしたって本当?

「日銀は、3年前から大規模な金融緩和をやってきました。『量的・質的金融緩和』とか『異次元緩和』と呼ばれています。これをもっと強力にするため、1月にマイナス金利もはじめました。」
引用元 日本銀行2016年3月25日作成

 日銀は「銀行の銀行」で、私たち一般の預金者が日本銀行にお金を預け入れることはできません。

 一方、市中の銀行はある一定額を日銀の当座預金に預け入れる必要があります。日銀は銀行が預け入れた「お金」の一部に対してマイナス金利を適用しているのです。これが日本で行われている日銀の「マイナス金利」政策です。

マイナス金利政策導入の歴史と背景

 「マイナス金利」政策は日銀だけが行っているものではありません。歴史的に見ると1970年代のスイスに始まっています。

 また、最も新しいところでECB(ヨーロッパ中央銀行 ユーロの発行を行っているユーロ圏の中央銀行です)が2014年に「マイナス金利」政策を導入しており、こちらも現在進行中です。

 他、スイス、デンマークに続き、日本では2016年1月29日の日銀の金融政策決定会合でマイナス0.1%の「マイナス金利」政策が決定しています。

 導入背景として、各国それぞれの要因はありますが、共通して言えることは「デフレからの脱却」を目的としています。

 デフレとはやっかいなもので、次のような悪循環となります。

・物価が下がる

・物価が下がるため、会社の売上も下がる

・会社の売上が下がるため、従業員の賃金も下がる

・従業員の賃金が下がるため、モノが売れず、さらに物価が下がる

繰り返し・・・(負のループ)

と、負の悪循環が生まれ、これは「デフレスパイラル」とも表現されています。

 マイナス金利の導入目的はこの悪循環を断ち切ろうというところにあり、効果のロジックは次のようになります。

・中央銀行がマイナス金利を適用する。

・銀行は中央銀行に「お金」を預けるとマイナスの手数料が発生するため、民間に「お金」を貸し出す。

・銀行が貸し出した「お金」は民間企業の「設備投資」や個人の「住宅購入資金(住宅ローン)」等として使用される。

・「お金」が市中に回りだすことで、好循環が生まれる。

・好循環が生まれることで、デフレが解消され、モノが売れだしインフレが起きる。

・モノが売れるため、会社の売上も上がる。

・会社の売上が上がるため、従業員の賃金も上がる。

・従業員の賃金が上がるため、モノがさらに売れだし、さらに好循環でのインフレが起きる

繰り返し・・・(正のループ)

 「マイナス金利」政策はこのロジックを当てはめた景気刺激策の一つとして行われているものなんですね。

マイナス金利政策の影

 このように見ると、マイナス金利ってすごい!と一見されますが、負の部分もあります。

 銀行は貸出金利が下がることで、収益力が下がります。

 マイナス金利により長期金利の指標である10年物国債の利回りが下がり、この長期国債で契約者から預かった保険料を運用している生命保険会社は予定利率を下げざるを得ない状況となっています。

 予定利率が下がる=保険料が上がる、となりますから、保険契約者にとっては保険料の負担増になっていますし、積立金も増えませんから、保険契約者は間接的な負担増となっています(日本の生命保険を金融商品として見た場合、今は購入する時ではありませんね!)。

 また、スイスでは一部銀行が預金者に「マイナス金利」のコスト(手数料)を課す等、預金者に直接的な負担増となっているケースもあります。

まとめ

〇「マイナス金利」とは元本につくプラスの対価ではなく、マイナスの手数料であること。

〇「マイナス金利」とは中央銀行が銀行に対して適用しているものであること。

〇「マイマス金利」の目的はデフレからの脱却であり、引いては緩やかなインフレを誘導すること。

〇「負の側面」もあり、私たちにとっては、保険料が上がったり、預金に手数料が課されたりとコスト増になるケースもあるということ。

 ECBを始め、マイナス金利を導入している各国は、その「出口戦略」の議論が出始めています。(つまり、マイナス金利政策をそろそろやめましょうということ)一方、日本は未だ「出口戦略」の議論すら出てきておらず、まだまだ、デフレの渦中にあるという事実。

 直近における内閣府発表の景気動向指数(一致指数)の基調判断は「改善」とされ、景気拡張の可能性が高いとされていますが、私たちにとって「景気拡張の実感」がないのは、まさに、個人消費が未だ「デフレの渦中にある」ことが大きな要因でしょう。

 「マイナス金利」は効果として良い側面もあります。しかし、その効果は限定的に過ぎません。そして、「マイナス金利」の「出口戦略」が議論され始めない限り、私たちが肌で感じる「景気の良さ」を実感するにはほど遠いという現実が、今の日本経済を覆っているのです。

[参考記事]
「中央銀行による利上げと利下げを分かりやすく解説します」

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