Read Article

広告

日本銀行の為替介入とは誰の指示でなんのためにやるの?資金源は?

 

広告

●日本銀行の為替介入とは?

 「円高」や「円安」という言葉があります。これは外国の通貨に対して日本円の価値が高いか、安いかという意味です。一般的には基軸通貨「米ドル」に対しての円の価値をいいます。

 何らかの原因で、極端な円高や円安状態になってしまうと、輸入や輸出などの外国との取引が混乱します。もしこのような状況になってしまったら、速やかに元の安定した状態に戻す必要があります。そのための手段として日本銀行が為替介入を行うというわけです。

●円高、円安の影響

 円高や円安になると、具体的にどのような影響があるのでしょうか?

1.円高の場合
 輸出品への影響が考えられます。例えば日本が米国に自動車を輸出するとします。これまでは1ドル=100円だったものが、為替相場の変動で1ドル=80円になったとします。これはドルに対して円の価値が上がったことになります。何故かというと、1ドル=100円の場合では、日本円で2,000,000円の自動車は米ドルでは20,000ドルになります(ここでは関税などはかからないものとします)。

 それが1ドル=80円になるとどうでしょう?米国では同じ日本の自動車を買うのに25,000ドルが必要になります。日本円で2,000,000万円の自動車は米国人からみると5,000ドル値上がりしたことになります。この差は大きいです。1ドル=80円換算では400,000円の差が出ます。ということは米国人からしてみると、20,000ドルで日本車を買おうとすると、1,600,000円の自動車しか買えなくなってしまいます。

 逆に日本からみると、今まで20,000ドルを受け取れば、2,000,000円になったものが、1,600,000円になるということです。日本からしてみたら、輸出金額の減少につながります。ということで極端な円高は輸出に大きな打撃を与えます。

 一方で海外旅行に行ったり、輸入品を購入する場合ははこれまでより少ない円で外貨と交換出来るようになるので得をすると言えます。同じ例で1ドル=100円から80円に変化したとします。米国で20,000ドルの自動車を日本に輸入する場合では、これまで2,000,000円を支払っていたものが、1,600,000円で買えるようになります。

2.円安の場合
 円高の逆になるので、輸出には有利に働きます。例えば1ドル=100円から1ドル=120円になったとします。これも自動車に例えると、日本円で2,000,000円の自動車を米国に輸出すると、20,000ドルで購入しなければならなかったものが、約16,667ドルで購入できるようになります。米国側からみると、値下したと同じことになります。

 一方で輸入する場合はドルに対して円の価値が下がったことになり、これまでより多くの円を払うことになります。20,000ドルの米国車を日本に輸入した場合、2,000,000円で購入できていたものが、2,400,000円になります。

●円高と円安ではどちらがよいのか?

 全体で考えると輸入より輸出が多い方が、その国には良いとされています。輸出が多いと多くの外貨が獲得でき、輸入が少ないと自国通貨の海外流出も少なくなるからです。なので、一般的には円安の方が有利とされています。

●為替介入の方法

 極端に円安や円高になった場合、為替介入の検討に入りますが、その決定は財務大臣が行います。財務大臣の指示を受けて、中央銀行である日本銀行が為替介入を行います。一般的には為替介入と言っていますが、正式名称は「外国為替平衡操作」といいます。諸外国の通貨を売買(交換)する際の交換比率である為替相場に介入して、円と外貨の交換比率を操作しようとするものです。具体的には通貨の取引の場である、外国為替市場で日本銀行が円をや外貨を売買して操作をします。

 この為替介入のための資金は財務省の管理する外国為替資金特別会計から捻出されます。

1.円安方向に誘導する場合
 外国為替市場で円を売って、ドルを買います。為替市場に多くの円が放出されれば、その分、円の価値が下がり、一方でドルを買うことで為替市場のドルが少なくなると円安ドル高になるという理屈です。実際には、円高に対する円安誘導を狙ったこの「円売り」介入が多いです。

2.円高方向に誘導する場合
 円高の逆で、ドルを売って、円を買います。為替市場に多くのドルが放出されれば、その分、ドルの価値が下がり、一方で円を買うことで為替市場の円が少なくなると円高ドル安になるという理屈です。

 日本では過去に何度か為替介入を実施しています。一度の介入で使う金額は約2兆円~8兆円規模になります。最近では、2010年~2011年の民主党政権時代に行き過ぎた円高や、投機目的での円買いを抑制するために、短期間で5度の為替介入を行っています。

●為替介入の効果

 実際に為替相場に影響を与えるような通貨を売買するには、莫大な資金が必要になります。複数の国で合意の上での協調介入であれば、ある程度の効果があるかもしれませんが、単独介入の場合は効果も限定的で短期的なものにならざるを得ません。また、意図的に為替相場を操作する行為なので、他国の反発を招く場合もあります。

 また、「口先介入」といって、政府高官などが為替介入をする素振りを見せる発言するだけで、為替相場に影響を与えます。例えば財務大臣などが「今は行き過ぎた円安である。しかるべき対応をする」と発言しただけで、円高方向に為替相場が動きます。

●まとめ

 為替介入は本来なら、しなくて済むのであればしない方が良い政策といえます。基本は金融政策で通貨を安定させることができれば問題ないのですが、世界経済の動向などの影響を受けて円高傾向になることがあります。円高ということは「円に信用がある」ことにもなり、一概に悪いわけではありませんが、高度にグローバル化した現在では貿易面では不利になりがちなので、極度な円高には為替介入もやむを得ない場合があります。

 今後も安定した円の為替相場を保てるような、政府や日本銀行の政策に期待と注目が集まります。

[参考記事]
「中央銀行による利上げと利下げを分かりやすく解説します」

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a comment

*
*
* (公開されません)

Return Top