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全世界株式(オール・カントリー)の罠──GAFAの比率が大きすぎるリスク

インデックス投資の基本方針として、「世界全体に広く分散投資を行う」という考え方が広く支持されています。全世界株式に連動する投資信託(例:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、楽天・全世界株式インデックス・ファンドなど)は、低コストかつ長期的な資産形成に適しているとされ、多くの個人投資家が利用しています。

しかし、その「全世界株式」という言葉が示す印象とは裏腹に、実際には非常に偏った構成となっているという事実があります。その中心にあるのが、米国の巨大IT企業、すなわちGAFA(Google(現Alphabet)、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon)です。

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全世界株式インデックスの実態

まず、全世界株式型の投資信託の構成比率を見てみましょう。たとえば、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)やFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動するファンドの場合、米国株の比率が60〜70%を占めています。そしてその米国株の中でも、GAFAをはじめとするハイテク・メガキャップ企業の存在感は極めて大きいのが実態です。

2025年時点のデータでは、GAFAとMicrosoft、NVIDIA、Teslaなどを含む「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる企業群が、S&P500指数の時価総額の30%以上を占めており、全世界株式インデックスにおいても約20〜25%程度を占める計算になります。つまり、「全世界に投資しているつもりが、実はその4分の1近くがアメリカの一部の巨大企業に集中している」という構造上の矛盾が存在するのです。

なぜGAFAの比率がここまで大きいのか?

この偏重には、インデックスの構成ルールが関係しています。時価総額加重型のインデックスでは、株価が上昇し、企業の時価総額が大きくなるほど、その銘柄の組み入れ比率も高くなります。これは一見合理的なように見えますが、実際には以下のような問題点を孕んでいます。

  • バブル的な過熱感の助長:人気のある銘柄ほどファンドに大量に組み入れられ、さらに資金が流入するというスパイラルが発生します。

  • 企業価値とファンダメンタルズの乖離:実体経済よりも市場の期待感に支えられた株価が過剰評価されやすくなります。

  • リスクの過小評価:GAFAのような巨大企業は「安定している」と思われがちですが、その業績は広告市場の変動や規制強化、イノベーションの停滞、地政学リスクなど、さまざまな外的要因に左右されます。

インデックス投資家が抱える見えない集中リスク

インデックス投資は「分散投資」によってリスクを抑える戦略とされますが、実態としては非常に偏った集中投資となっている場合があります。特にGAFAを含む米国のメガテック株に大きく依存する形になっている現在、次のようなリスクが無視できません。

1. 米国株のバリュエーションの高止まり

S&P500のPER(株価収益率)は長期平均を大きく上回って推移しており、特にGAFAのようなグロース株は利益成長が鈍化すれば一気に評価が下がるリスクを抱えています。仮に米国株全体が調整局面に入った場合、「全世界株式」であっても実質的に大打撃を受ける可能性があります。

2. 規制リスクの増大

欧州連合(EU)や米国当局を中心に、独占禁止法や個人情報保護、AI利用の制限など、ハイテク企業への規制強化が進んでいます。GAFAにとっては事業モデルを揺るがすような制度変更が起こりうる状況で、株価にも中長期的な影響を与えるリスクがあります。

3. テクノロジー・セクターの構造転換

生成AIや量子コンピューティングなどの技術革新により、新たなプレーヤーが出現する可能性があります。過去にIBMやYahoo!が時代の波に取り残されたように、GAFAの一角が停滞するリスクは常に存在します。

対策:本当の分散投資を目指すには

では、インデックス投資の有効性を維持しながら、GAFA偏重のリスクを抑えるにはどうすればよいのでしょうか?いくつかのアプローチが考えられます。

1. 均等加重型インデックスの活用

時価総額加重ではなく、銘柄ごとに均等に配分するインデックスファンド(Equal Weight型)は、特定銘柄の過剰な偏重を避けることができます。パフォーマンスがやや劣る可能性はありますが、リスク分散の観点では合理的です。

2. エマージング市場や小型株への比重増加

新興国や先進国の中小型株への投資比率を意識的に高めることで、GAFAなどの米国大型株への依存度を下げることが可能です。全世界株式ファンド一本に頼らず、個別に地域やテーマを分散する工夫も有効です。

3. バリュー株や配当株への分散

成長株偏重のポートフォリオを是正するために、安定配当銘柄や低PERのバリュー株への投資を増やす方法もあります。こうした株は市場の暴落時にも下落が限定的で、全体のリスクコントロールに役立ちます。

結論:全世界株式インデックスは万能ではない

インデックス投資は理論的には非常に合理的で、低コストで長期的な資産形成に最適な手段です。しかし、その裏側に潜む「偏重構造」──すなわち、GAFAや米国市場への依存度の高さ──を理解せずに「分散されているから安心」と考えるのは危険です。

投資信託の銘柄構成や比率、時価総額の内訳を定期的にチェックし、自身のリスク許容度や投資目的に応じて調整を行う姿勢が必要です。世界経済が多極化し、新興国の存在感が増していく未来において、本当の意味での「分散投資」とは何かを、もう一度見直す時が来ているのではないでしょうか。

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