私は中小企業士の資格取得しており、創業支援機関で起業・創業希望者の相談や指導を行っています。今回は起業する人が最初の段階で直面しやすい問題とその解決方法についてお伝えいたします。
アイデアを「見える化」する
起業を検討されている方は多くいますが、具体的な創業計画書を策定している方はほとんどいません。創業の相談に来られる方の7割近くは漠然としたアイデアがあるが、どのようにして進めていくべきか分からないという悩みを持っています。
創業する際には創業計画書という事業内容の計画書を作ることが一般的ですが、漠然としたアイデアの方にいきなり事業計画書を策定してくださいといっても曖昧な計画書が出来るだけです。
このような方は、まずは自分の頭の中にあるアイデアを「見える化」することが非常に重要です。自分自身で分かっているつもりでも、色々と考えるうちに、整理できなくなることが多いです。そのため、相手に説明する時もどこをどう話すべきか分からなくなったり、自分自身でも整理が出来なくなってしまいます。
では「見える化」する具体的な手段ですが、以下の項目を書き出してみることをお勧めします。
見える化①
何のために事業を行うのか(起業をするのか)、何を目的として事業を行うのか
見える化②
自分の強み、弱みは何か(事業に活かせる強みはどんなものがあるのか)
見える化③
どのようなビジネスチャンスがあるのか(市場の状況や競争相手はどこか)
見える化④
ターゲットはどんな人か(年齢、性別、年収、職業、地域等々)
見える化⑤
どんな商品・サービスを提供するのか、またその商品やサービスにはどのような価値があるのか
見える化⑥
顧客に対してどのようにアプローチ、販路を開拓していくのか
見える化⑦
上記を行う際にどのような課題があるのか(人、資金、物、スキル、ノウハウ等)
この中でも①を考えることは非常に重要です。①はいわゆる経営理念というものになり、事業を存続理由になるものです。誰かの役に立ちたいという思いがあるから起業するわけです。②~⑦は状況によっては変化するものですが、①については、一度決めたら変わらないものです。自分自身の想いから決まるものであり、②~⑦はその想いを実現する手段のようなものと思ってもらえればいいです。
②、③はそれぞれ内部環境分析、外部環境分析と呼ばれるもので、内部環境分析は自分に協力してくれる人、保有している資産やスキルを整理するものです。箇条書きでいいので、特にご自身の強みを中心に書き出してみてください。自分の苦手なことや短所はたくさん出てくる方が多いですが、自分の得意なことや長所が書けない人は割と多いです。最低でも10個くらい強みを書いてみましょう。
外部環境分析は、競争相手はどんなところか、進出する市場はどのくらいの規模なのか等の自分自身ではコントロールできない外部の要因です。ここは調査をしないとわからない部分でもあるので、なかなか書けない方は飛ばしてもらってもいいです。事業内容のアイディアが具体的になってきたら調査をして書いてみてください。
④~⑥が具体的な事業内になります。事業を検討するうえでの3つの軸「だれに」「何を」「どのように」という視点から検討すると、具体的な内容に落とし込めます。相手に伝える際にも非常に分かりやすくなります。
最後に⑦は①~⑥を行ううえで、解決しなければいけない「課題の抽出」です。どのような課題があるのかを明確にすることで、具体的な行動が見えてきます。相談に来られる方は「何をするべきなのかわからない」とおっしゃる方が多いです。そのような方は課題が明確になっていないことが原因ですので、まずはどんなことが課題なのかをしっかりと把握しましょう。
課題を抽出する際には、「ヒト」「モノ」「カネ」「ノウハウ・情報」の4つの視点で考えましょう。例えば「ヒト」であれば、事業を行う上でいつまでにどのくらの人数が必要で、どのようなスキルを持った人を揃える必要があるのか。「モノ」であれば必要な備品や設備はどのようなものがあるのか、「カネ」であれば必要な資金はどのくらいで、調達方法をどうするか、「ノウハウ・情報」であれば、事業に必要なスキルや知識はどんなことあるのかなどです。課題がより具体的になってくるとその後の行動についてもより具体的になります。当初から課題が明確になることはあまりないので、この部分は①~⑥を決めた後にじっくりと考えてみてください。
具体的な事業計画
①~⑦までを検討した後は、具体的な事業計画を策定してみてください。事業計画に記載する項目は①~⑦の内容で大部分を書くことができると思います。ただ、事業計画を策定する際は数値面も記入する必要があります。①から⑦に加えて、「資金計画」や「収支計画」が必要です。
「資金計画」とは事業を行う上でいくら資金が必要でその調達方法をどこから行うのかを表したものです。「収支計画」は起業後に売上はいくらで、経費がいくらかかり、利益はどの程度かを数値で表したものです。書き方については長くなってしまうので、ここでは触れませんが、先ほどの①~⑦が具体的になっていると、この資金計画や収支計画も書きやすくなります。
起業というのは、今の日本ではまだまだハードルが高いものと思われていますが、事前の準備をしっかりと行い、緻密な事業計画書を策定して行えば成功確率は格段にあがります。
是非、起業を検討されている方は参考にしてみてください。
[参考記事]
「起業に失敗する人の5つの特徴とは」
Leave a comment